あなたの孤独をまもる人になりたい。

去年の暮れ頃から「なんだか最近ムーミングッズをよく見かけるな〜」と思っていたら

今年2014年はムーミンの作者トーベ・ヤンソンの生誕100周年らしい。

ということで流行りに乗じてトーベ・ヤンソン短編集買って読みました。

これが面白い!知らなかったよヤンソン!あなたのムーミン以外の本がこんなに面白かったなんて!

「誰かとこの面白さをわかちあいたい!」と思ったのに、周りが誰も読んでない。なんで!トーベ・ヤンソン100周年でしょ!?流行ってないのかよ!

ということで

トーベ・ヤンソン短編集の中で1番気に入ったお話しのこと書きたいと思います。


【往復書簡】

日本人の女の子タミコからヤンソン宛に届いた8つのファンレターで構成されている小説(…小説だよね??)

ヤンソンからの返事が載っておらず、すべてタミコからの手紙である。タミコはヤンソンに憧れ英語を勉強し旅に憧れ留学も志している。6つ目の手紙で奨学金がもらえるかもしれない、という話も出てくるが、8つ目最後の手紙で突然タミコの母の死が告げられ、タミコは旅をあきらめてしまう。


まあこんなお話で、タミコのヤンソンへの憧れが可愛らしく、若い情熱は読んでるこちらが気恥ずかしくなるほど…なんですが

たった8つの、それも一方的な手紙で

ちゃんとストーリーが成り立っていることが素晴らしい。

でもなにより良いなと思ったのはタミコが色々な言葉でヤンソンへの好意を表すところです。


「わたしはあなたが大好きです。

    おなじくらい年をとって、おなじくらい賢くなりたい、と夢みています。」

「あなたはしあわせだなあと思います。」

「わたしの時間は、あなたのことを考えるにつれ、どんどん長くなっていきます。」


同じくらい年をとりたい っていうのは良い、私は老いに肯定的な言葉が好きです。

それから、あなたはしあわせだ、というのも良い。ひとの幸不幸を決めつけることは時に(というか大抵の場合)失礼なことだったりするけれど、タミコの中では好意を表す言葉になっている。不思議だなあ。

上に書いたような感じにタミコは色んな言葉でヤンソンへの想いを綴っていて、そのどれもすきなんだけど1番すきなのは、


「わたしはあなたをなぐさめ、あなたの孤独をまもる人になりたい。」


という一文です。

あなたの孤独をまもる って矛盾している。タミコはヤンソンと会って話がしたいけど、ヤンソンの孤独を守ってあげたい。

多分そのふたつは同時にはできない。一緒に居れば、それはもう孤独ではない。

でも、もしそれが出来たなら、それはとっても素敵な居心地の良い関係になるんじゃないかな。

家族でも恋人でも友人とでも。

一緒に過ごして、お互いの孤独を守り合えたなら。


いつか私もそんなふうに誰かと生きたいし、今のところは恋人とそのような関係になりたいです。

トーベ・ヤンソン短篇集

トーベ・ヤンソン短篇集